第5話
やがて、学校に行くふりをして、僕はゲームセンターに通い詰めるようになった。大会当日も会場にすら行かなかった。ひよりちゃんにも、やまちゃんにも会わなかった。たまに、ゲームセンターで学校帰りのいつきに出くわした。
ある日、いつきが僕に声をかけた。
「もったいないぞ。どうして、学校に行かねーんだ?みんな心配してるぞ」
まったく、お節介というか。
「知らねーよ」
僕は、ゲームに熱中するふりをして、繰り返した。
「ふうたくん」
声がして、振り返る。バツの悪そうな顔をした、ひよりちゃんとやまちゃんが立っていた。
多分、いつきが連れてきやがったんだ。
「走るのをやめる決心はわかった。でも、学校には行かないと・・・」
やまちゃんが、ぼくに声をかける。
「知らねーよ。優等生のやまちゃんに、僕の気持ちがわかるかよ」
「ふうたくん!」
ひよりちゃんが、ぼくとやまちゃんの間に割って入った。
「どけよ!」
ぼくが突き出した手に押されて、ひよりちゃんが倒れた。
空気が固まった。
「おい」
それまで黙っていた、いつきが僕の襟首をつかんだ。
「お前がどーなろうと知ったことじゃないけどよ。ひよりちゃんに暴力振るうのはおかしいだろ」
1発、いつきの正拳が僕の頬に入った。
(つづく)