第4話
学校が味気なかった。
いつきが仕掛けてくるちょっかいも、今では、全てが煩わしい。
すべての授業が終わると、教室にひよりちゃんが迎えにきた。それをすり抜けて、僕は放課後をゲームセンターで過ごした。
最近は部活で時間がとれなかったから、ひさしぶりのゲームセンターは新鮮だった。どうせこうなるんなら、どうして走ることを早くに諦めなかったんだろうか?
最初に人生の結末を知りたい。そして、この世から、無駄な努力を全部なくそう。
大会まであと3日。
それでも、ひよりちゃんは迎えにきたけど、その日も僕は無視してのけた。
今、調整をしないということは、完全に大会当日へのコンディションづくりを諦めるということ。もう、大会への未練はまったくない。記録が伸びないのに走ることにどんな意味がある?
「なあ、おい」
ゲームセンターで隣に立ったいつきが僕に話しかける。
「いーのか? 大会近いんだろ?」
「知らねーよ。すべてコーチが悪いんだから」
「ふうん」
いつきが気の無い返事で応えた。
しばらく時間を潰して帰宅すると、父親が僕を待っていた。神妙な表情だ。
「部活、、、休んでいるんだって?先ほど、指導者の方がいらっしゃったんだが」
あの川浜コーチめ。姑息な手を。
「知らねーよ」
僕は、口癖を繰り返し、自分の部屋に逃げ込む。スマホを家のWi-Fiに繋ぎ、無料ゲームをタップした。繋がった瞬間、イライラが消えて、僕の気持ちは穏やかになった。
幼いころからの唯一の取り柄をやめたんだ。もう学校に行く意味もない。すべてが「知らねーよ」だった。すべてが他人のせいで、あらゆる些事が他人事にように感じられた。