第2話
中間テストがかえってきた。
結果は相変わらずだ。数学と物理はまあまあだったけど、英語と国語が壊滅的に悪い。文学は行間を読むことが大切と言われるけど、書いてない文字の間にどんな意味を見つけようと言うのだろう。そもそも、問題の意味そのものが僕には理解不能だ。
「ふうたさま~ぁ、どうだった?」
クラスメイトのいつきが帰ってきたテストをのぞく。僕は見えないよう裏返して隠す。
「どうせ、テストの受け直しに、補習に行くんだろ? なんなら、ついていってやっても構わないんだぜぇ?」と、いつきがからかう。
「なんとか、赤点は回避してるさ。お前とくらべるんじゃねーよ」と僕。
「なんだとぉっ!表に出ろ!」
周囲がくすくすと笑っている。いつきと僕の喧嘩は日常茶飯事。
なにしろ、保育園からのよしみだ。周囲をわきまえた喧嘩の仕方は知っているし、それは、いつきだって同じ。いい意味で、腐れ縁の僕たち二人が、どんな形であれ仲がいいことはみんな周知の事実だから、担任の先生はじめ他の同級生も真剣に取り合わない。僕は気にいらない人間とは、最初から一切の口をきかない。だから、いつきと話ができるってことは、お互い認めているってことでもあった。
とりあえず、ここからは大会に向けて、部活にまっしぐらだ。
「ふうたくん、女の子が呼んでいるよ」
クラスの女子が、僕に声をかける。見れば、別のクラスのひよりちゃんが、教室の扉の前に迎えにきていた。僕は「ん」とだけ応えて、ひよりちゃんのもとへ向かう。
「・・・ねえ。ふうたくん。あの子にお礼くらい言った方がいいよ?」
「必要ないさ。だって、日常だもの」
「せっかくあなたのために声かけてくれたんだから、感謝の気持ちは伝えないと。友達いなくなっちゃうよ?」
「ん」気の無い返事を再度、繰り返し、僕はさっさと教室を出た。