純文学とワイングラス
第2話 図書室 SIDE B

モヤシとゆりかと、そして私。三角関係というには、少しズレていて、でも確かに交差していた想いがあった。

モヤシが最初から私を見ていたなんて、当時の私は気づきもしなかった。彼の告白はどれも青くさくて、でも今聞いたら、胸がキュンとするようなものばかり。「君といたら、楽しい夢を見れそうなんだ」なんて、今なら満点あげちゃうのに。あの頃の私は点数なんかつけて、どこまでも不器用だった。

ゆりかの言葉も、意外だった。「途中で植木鉢をひっくり返して、ハイビスカスが咲いても、それはそれで面白いじゃない」って。なんて達観した青春の過ごし方。だけど、きっと少しは寂しかったんじゃないかと、今なら思う。私が告白の“練習台”だったように見えて、実はゆりかも、自分の気持ちを守るために、私を盾にしていたのかもしれない。

それでも、今はこうして、モヤシと夫婦になって、娘たちが眠る隣の部屋で、ジントニック片手に思い出話ができる。人生って、案外うまくできてる。モヤシの今夜の口説き文句が何点かは、まあ、つけないでおこう。もう点数じゃない。隣で笑ってくれて、そばにいてくれるだけで、もう満点なのだから。