プロローグ
高校のことを思い出すと、なんだか甘くてしょっぱくて、ピリッとしたスパイスまで効いてる、そんな気持ちになる。楽しいだけじゃなかったけど、きっと何度も思い出す。これからも、ずっと。
私、瀬戸内あゆみの高校生活は、あの図書室に始まって、図書室で終わった気がする。あのときの「やっちゃったなぁ」って感情と、胸がギュッとなる切なさ。再会があっても、それはきっと消えない。
彼――三枝裕史、通称モヤシは、いつもどこかで私の近くにいた。クラスが違っても、友達づたいに繋がってて、記憶の中でもちらっと彼の存在が顔を出す。私たち、未来ではちょっとした偶然で再会するけど、それは一緒に歩んだっていうより、タイミングが同じだっただけ。
そんな私とモヤシの、ちょっと変な青春の話。カセットテープのA面とB面みたいに、ふたつの物語を、今から書いてみようと思うんだ。